アベノミクスとモラトリアム

安倍政権誕生期待から急激に始まった円安、株高。アベノミクスといわれる拡張的な財政政策、同じく拡張的な金融政策、さらに今後取り組みが急務となる成長戦略、この「3本の矢」政策への期待が膨らんでいます。

ある若い起業家が

安倍政権誕生により、来年以降に予想される大きな経済変動に備える準備期間が与えられた。この時間を有効に活用して、準備しよう。

という主旨のことを、ネットを通じて発信していました。こうした将来予測は、当たるも八卦、当たらぬも八卦ですが、もっと確実なこともあります。

それは、中小企業金融円滑化法の最終期限到来についてです。

→?中小企業金融円滑化法終了後のモラトリアム

昨年9月末までの利用状況は、344万件、金額にして95兆7,391億円にのぼっています。

1社5件利用したと仮定すると、資金繰りが苦しくて条件変更を申し入れた企業は、70万社弱、1社当たりの債務は1億3,600万円程度と概算出来ます。

また、金融機関が条件変更に応じた割合は、約93%と高い割合です。この背景には、金融検査マニュアルを通じた金融庁の金融機関に対する強い指導がありました。

今年2013年3月31日で法律が期限切れとなり、それ以降、貸付条件の変更等に対する法律的な裏付けはなくなります。

しかし、金融庁は、「円滑化法期限後も、金融機関の対応は何ら変わらない」とPRに努めています。実際そうだと思います。しかし、「元金の返済猶予」はあくまで「猶予」であって、いつかは返済しなければなりません。

4月になったからと言って、急に返せと言うわけではないですが、猶予期限が到来したとき、再度猶予が受けられるかは、定かではありません。ですから、短期的にはいままで通りですが、長期的には厳しい対応を予想してそれに備えなければなりません。

上記の起業家は、このことをイメージしているわけではないようですが、円滑化法期限後に若干の猶予期間が与えられたという点では、「この時間を有効に活用して、準備しよう」という彼のメッセージは、資金繰りに苦しむ多くの中小企業にも当てはまります。

では具体的に何すべきなのでしょうか。

まずは徹底した経費削減です。これについては、飛翔法律事務所の今月の「飛翔法務セミナー21」で、五島弁護士が「円滑化法終了後も会社を存続させる対応策」について、お話しされています。とても参考になりましたので、いくつかご紹介しておきます。

1)残業管理

まずは、徹底した残業管理に取り組むべきです。「残業をさせない」ことを前提に、仕事の効率を高める、無駄な業務を廃止する、などが必要です。

このためには、一つひとつの業務について、「○○するのは何のため?」と問いかけてみることが有効です。「顧客価値」につながらない業務については、見直すべきでしょう。

2)希望退職の募集

整理解雇は、後に不当解雇として争われるリスクがありますので、希望退職の募集と合理的な退職勧奨にすべきです。

「合理的な退職勧奨って何?」と疑問をお持ちの方もあるかも知れません。このあたりは、やはり弁護士と相談しながら進めるべきでしょう。

3)現業部門のアウトソーシング

社外で働く作業的な部門については、別会社としてアウトソーシングして、人件費を圧縮する方法も紹介されていました。

4)賃料減額交渉

過去5年間をメドに、賃料がそのままの場合、減額出来る可能性が高いようです。アベノミクスの影響でしょうか、地価が上昇しつつありますので、減額交渉は急ぐ必要があります。合わせて保証金の返還交渉もできますから、検討してみましょう。

このテーマについては、3月の「飛翔法務セミナー21」で、五島弁護士が「固定経費圧縮!賃料減額交渉の実務」と題してお話しになりますので、関心ある方はご参加ください。

5)有休財産の処分

人件費削減などを実施する場合には、役員報酬削減や会社の有休財産の処分を先行させる必要があります。会社も身を切っていることを従業員に納得してもらわないと、モラールの低下を招き、企業価値を毀損します。

これらは、どちらかというと「守り」の施策です。一方、将来の発展を見据えた「攻め」の施策も同時に検討しましょう。これについては、次回にお話しします。

中小企業金融円滑化法終了後のモラトリアム

中小企業金融円滑化法(以下、円滑化法)の終了が昨年来話題となっています。

中小企業等に対する金融円滑化対策について

当初の円滑化法には、法律の付則に

(この法律の失効)第二条

この法律は、平成二十三年三月三十一日限り、その効力を失う。

と決まっていました。

しかし、2011年(平成23年)3月の一回目の改正円滑化法でこの期限を1年延長し、2012年(平成24年)3月の二回目の改正円滑化法で、さらに1年延長しました。このときは、これが最後の延長であるとし、最終期限を2013年(平成25年)3月31日と定めています。

その期限が間もなく訪れます。では、期限到来後はどうなるのでしょうか。これについては、金融庁は、2012年(平成24年)11月1日の大臣談話に合わせて、以下のパンフレットを公表しています。

これを素直に読めば、金融機関の対応は大きく変化しないよう、金融庁が強力に指導するので、「円滑化法」期限到来後もこれまでと「何ら変わらない」ということです。

ですから、当面、金融機関は柔軟に対応すると思います。しかし、次の文言は見落とせません。

借り手が抱える経営課題の解決には相応の時間がかかるものです。

⇒ 本年3月末までに、何らかの最終的な解決を求めるというものではありません。

つまり、「円滑化法終了後も一定の期間は待ちましょう」ということです。「一定の期間」がどのくらいかは明らかではありませんが、再度「モラトリアム」が与えられたわけです。

ですから、この猶予期間を最大限に活用して、会社を存続させるためのあらゆる手段を講じなければなりません。

具体的にどうするか。次回はこれを考えてみたいと思います。

モラトリアム法のモラトリアム

モラトリアム法とは、「中小企業金融円滑化法」、実はこれも略称で、正式な法律名は「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(平成二十一年十二月三日法律第九十六号)」です。

2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻以降、急激に悪化した景気の影響を受けている中小企業者及び住宅資金借入者の資金繰りを支援するための法律です。このことは、第1条(目的)に明示されています。

(目的)第1条

この法律は、最近の経済金融情勢及び雇用環境の下における我が国の中小企業者及び住宅資金借入者の債務の負担の状況にかんがみ、(中略)、中小企業者及び住宅資金借入者に対する金融の円滑化を図るために必要な臨時の措置を定めることにより、(後略)。

2009年(平成21年)12月3日公布、同12月4日に施行されました。

条文に「臨時の措置を定める」とあるように、約2年間の時限立法として施行されたのですが、経済状況が好転しないことに加え、2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災による更なる状況の悪化等から、期限が延長されました。

冒頭に書いた「モラトリアム法」という名称ですが、「中小企業金融円滑化法」が議論されていた頃にはよく使われていましたが、その後は、「円滑化法」という呼び方が一般的です。

「モラトリアム」は、ラテン語の”mora”「遅延」が語源で、本来するべきことを繰り延べしたり、中断したりする状況を表す場合などに使われています。

金融に関して使われる場合には、「支払猶予令」、つまり「預金払い戻しに対して、銀行に一定の猶予期間を与える」制度を意味します。預金者(債権者)に対する銀行(債務者)の支払繰り延べですね。

この意味からすると、「円滑化法」も、銀行(債権者)に対する中小企業者(債務者)の支払繰り延べですから、構造的には同じ。「モラトリアム法」という通称も、頷けます。

過去には、1923年(大正12年)9月1日に起こった関東大震災直後の9月7日に「私法上の金銭債務の支払延期及手形の権利保存行為の期間延長に関する件」が発布されました。「モラトリアム令」です。

さらに、9月23日には、震災前に銀行が割り引いた手形について、日本銀行が再割引に応じ、その決済期限を2年後の1925年(大正14年)9月30日にするという「日本銀行震災手形割引損失補償令」が発布されています。

しかし、2年が経過しても決済が進まず、期限を2度延長(モラトリアム)して、発布から4年後の1927年(昭和2年)9月30日に終了しました。

決済されず日本銀行が損失を被った場合には、政府がそれを最大1億円まで補償することも定められていましたが、結果的に2億円を超える膨大な不良債権が残こり、この処理を巡り国会が紛糾する中、昭和金融恐慌に至っています。

このときには、大蔵大臣高橋是清が、500円以上の預金支払いを3週間猶予するモラトリアム期間を設けることで、金融恐慌を沈静化させています。このモラトリアムは延長されていません。

さて、平成の「モラトリアム法」たる「円滑化法」です。

「円滑化法」は当初2年間の時限立法でしたが、終了期限が延長されました。モラトリアム(遅延)したのです。しかし、2回の延長(モラトリアム)を経て、施行から4年目の今年(2013年)3月31日にいよいよ期限が到来します。

「安易な返済猶予はモラルハザードを引き起こす」と反対の声もありましたが、景気悪化による受注の激減や失業等による収入減で借金の返済に困っていた中小企業者や住宅ローン利用者支援には大きな効果があったようです。

返済猶予は、2012年(平成24年)9月末時点で、340万件、累積額95兆円、最終的には100兆円を超すと言われています。

当初2年で片が付くと考え、その損失額を1億円と見積もったが、2度の期限延長を繰り返し、2億円を超える膨大な不良債権を残した大正時代のモラトリアム法。偶然にも2回のモラトリアム(期限延長)を経て、今年3月に期限が到来する平成のモラトリアム法。

「円滑化法」がどのような結果につながるのかは、もう少し時間が経過しないと分かりませんが、果たして歴史は繰り返すのでしょうか。

ISMSに取り組むメリット

情報セキュリティマネジメントシステムISMS)構築のお手伝いをしています。どのようなお手伝いかというと、ISO9000とか14000と同様に、情報セキュリティの要求規格であるISO27001に適合しているかの審査を受けて、ISMS認証を取得するまでをサポートしています。

支援内容及び実施プロセスは

  1. ISO27001要求事項をご説明し、理解していただく
  2. 情報セキュリティ基本方針書を作成支援する
  3. 各部門ごとに情報資産をピックアップしてもらい、情報資産台帳の作成を支援する
  4. 情報資産に対するリスク分析をサポートする
  5. どのようなリスク対策を実施するかについてアドバイスする
  6. 実施することにしたリスク対策を盛り込んだ管理マニュアル作成を支援する
  7. 管理マニュアルと連動して使用する様式類の雛形を提供し、カスタマイズをアドバイスする
  8. 年間の運用計画の策定を支援する
  9. 情報セキュリティ教育の実施をサポートする
  10. 運用状況の監査の実施をサポートする
  11. 適切な審査機関をご紹介する
  12. 審査機関の審査指摘事項に対する対応策をアドバイスする

などとなっています。

一番時間がかかるのが、3?5あたりでしょうか。「情報資産」とは何かの議論からスタートして、どこまで情報資産として特定するのか、それに対するリスクをどのように認識するのか、リスクに対する対応策をどこまで実施したらよいのか、議論のタネは尽きません。

もちろん予定されたプロジェクト期間内に認証を取得していただく必要があり、必ずしも十分な時間が取れないのも現実です。

さらに、ちいさな会社で、余剰人員がいらっしゃるところはありません。どこでも、社員さんは現業の業務で手一杯。そこへ社長からプロジェクトチームへの参加を命じられて、聞いたこともないような規格を読み、理解しなければならないので、メンバーの方の負荷は非常に大きいものがあります。

いかに効率的にメンバーの方にアウトプットをしていただくかが、コンサルタントの腕の見せ所でしょうか。

しかし、こうした取組みが、その会社の情報資産に対する認識力を高め、管理能力全般を大きくアップするのも事実です。

会社の様々な業務の中には、本来決めるべき事柄がはっきり決まっておらず、あるいは、やめるべきリスクの高い行為が慣行として続いていたりする場合が多いのではありませんか。ついつい惰性で続けていて、なかなか見直すきっかけがない。

このような状況にある会社にとって、情報セキュリティマネジメントシステムの構築に取り組むことは、セキュリティとは直接関係ない会社全体の業務についても、プロセスアプローチといわれるPDCAサイクルを導入するきっかけとなります。

また、情報セキュリティ対策に「正解」はなく、企業としてリスクをどのようにマネジメントするかが問われるわけですから、プロジェクトメンバーは経営者視点で考えることが求められます。コンサルタントのアドバイスを受けながら、リスクマネジメントについてしっかり学ぶ事ができるので、管理能力が大きく向上します。

ISMSの認証が必須の業種もありますが、そうでない業種でも、情報セキュリティマネジメントシステムの導入を上記のような会社全般のマネジメント能力向上や会社のコアメンバーの管理能力向上のツールとして活用することも出来ます。

外部第三者機関の認定を受けることで、企業価値も高まります。

「情報」は経営資源そのものですので、そのマネジメントレベルを高める意義はとても大きいです。企業力アップにつながります。

ちいさな会社でも認証取得は可能ですので、企業力アップのために、ISMS認証取得を検討されてはいかがでしょうか。