ちいさな企業の補助金活用法(7)

補助金を上手に活用して、新規事業を軌道に乗せた会社の事例を紹介しています。

経営資源が非常に限られているちいさな企業における新規事業のあり方には、大きく二つの方向性があります。

一つは従来とは、技術やノウハウ、市場が異なる、言葉通りの「新規」事業。もう一つは、技術・ノウハウか市場か、少なくともどちらかは既知の事業。

経営学の用語でいえば、前者が無関連多角化、後者が関連多角化ですね。

私が担当している地域資源活用する新規事業を支援する助成金(おおさか地域創造ファンド 地域支援事業助成金)で過去6年間に採択された事業の内、助成期間を終了した事業を、助成した新規事業の立ち上げに成功したかどうかの観点で分類すると、次のようになります。

この図は、過去6年間で助成し、助成期間を終了した22事業について分類したものです。成功か否かは私の印象として判断していますから、厳密な内容ではありませんが、おおよその傾向を知ることはできます。

技術・ノウハウも市場もよく知っている分野での新規事業が最も成功確率が高いことは明らかです。逆に、未知の市場に進出することの難しさもわかります。

これら22の事業は、書類審査、面接審査というスクリーニングを経ています。ですから、ビジネスプラン的には一定水準以上であり、助成金やハンズオンサポートなどの手厚い支援も受けています。

それでも新製品や新サービスで新しい市場を開拓するのは困難だということです。

今回は、少し話が脱線しましたので、次回、事例の続きをお話しします。

ちいさな企業の補助金活用法(6)

「羊頭狗肉」という言葉がありますが、「補助金活用法」というタイトルなのに、だんだん内容がずれてきていますね。

平成24年度の補正予算あるいは平成25年度予算において、相当額の補助金予算が組まれています。今後順次公募が始まっていくと思われます。「補助金を活用したい」と期待されている経営者も多いことでしょう。

それに水をさすわけではありませんが、新規事業開発に対する補助金事業に長年たずさわっている経験から、「ちいさな企業の補助金活用は、意外と難しい」という問題意識があります。

この問題意識が、「ちいさな企業の補助金活用法」というこの一連の記事のベースです。

難しい要因として、「取り組もうとする新規事業そのものに内在する難しさ」と「補助金ならではの事務処理の難しさ」の二つの側面があります。

後者については、補助金が一般的に先払いの精算払いであること → ちいさな企業の補助金活用法(2) 、補助対象経費の制約が大きいこと → ちいさな企業の補助金活用法(3) 、で説明しています。

一方、前者については、新規事業といえども、既存の技術・ノウハウを深掘りして、既知の市場を攻めるのが最も成功確率が高いこと → ちいさな企業の補助金活用法(4)、で説明しました。

ですから、「補助金活用法」というノウハウに関しては、(2)?(4)に書いていますので、そちらをお読みください。

前回の(5)から、、既存の技術・ノウハウを深掘りして、既知の市場を攻めて成功した事例を紹介しています。

ここまでが、これまでの振り返りです。

さて、本題に入りましょう。補助金を上手に活用した事例紹介の続きです。これは、ある会社が次図の二重丸ゾーンでの新規事業に取り組んだ事例です。

この会社は、大阪府能勢町で創業300年能勢酒造さんです。

今から6年前の2007年当時、自社の敷地から湧き出る美味しい水を使った炭酸水を製造し、近畿圏の酒販卸を通じて主に業務用として 販売していました。この商品をベースとして、その頃ブームになりつつあった地サイダーの開発に取りかかりました。

そして、この新規事業で大阪府の経営革新計画の承認を受けています。丁度この年に、おおさか地域創造ファンドの助成金制度がスタート。応募17社から4社採択されましたが、その4社の内の1社です。

4倍を超す高い競争率を勝ち抜けた理由は、?自社の技術を磨き「特許申請」を行っていること → ちいさな企業の補助金活用法(5)、?応募した新規事業で経営革新計画の承認を受けていること、などがあげられると思います。

助成金で事業化を応援した能勢酒造さんの「桜川サイダー」です。このサイダーは、今や大阪を代表する商品に育っています。

おおさか地域創造ファンド助成金は、最長3年度支援します。能勢酒造さんも、サイダー事業において、試作・改良から商品化、販路開拓、地域のおけるブランド化まで、3年間助成金を有効に活用いただきました。

補助金制度はそれぞれにミッションを持っています。税金を原資とする公的な補助金に応募される場合は、この補助金のミッションを十分理解しておくことも大切なポイントです。

能勢酒造さんのサイダー事業の躍進は、補助金のミッションを十分理解し、それに沿った活用を行ったことにあります。

これについては、また次回お話ししましょう。

ちいさな企業の補助金活用法(5)

ちいさな企業が新しい事業に取り組む際に、補助金をどのように活用したらよいかについて、何回かに分けて書いてきました。これまでは、補助金を上手に活用できないよくあるケースとして、次の3つを紹介しました。

  1. キャッシュがない
  2. 補助対象外の費用に注意
  3. 知らない分野や市場にチャレンジする

最後の「知らない分野や市場にチャレンジする」というのは、経営革新計画の策定や第二創業といわれる新規事業立ち上げなどで多く見られるケースです。

新しい事業に挑戦するということの背景には、既存事業の頭打ちや衰退という現状を踏まえてのことが多いですから、新しい分野や市場に進出するのが当然といえば当然かも知れません。

しかし、なかなかうまくいかない。時間がかかる。結果として、会社を傾かせることも多い。このことをしっかり認識して、少ない投資で実験的に進めるような取り組みが不可欠です。

このノウハウについてはまた別の機会にお話ししたいと思います。

さて、補助金を活用して会社を大きく成長させたケースを考えみましょう。

次の図をご覧ください。この図は、ある会社が新規事業に取り組んだ際の「強み」を示した図です。

活用出来る資源としての「おいしい水」と「泡の技術」。しかも、「炭酸の泡にこだわりました」ならキャッチコピーとしてありがちですが、この会社は「炭酸飲料」「炭酸飲料水」という名称で二つの特許出願を行っています。

ここが一つのポイントです。

公募補助金は、応募事業から何社かを選んで補助します。補助金の主旨によって、選考基準は異なりますが、新規事業を支援するタイプの補助金では、その事業の新規性が選定基準になっていたりします。

そうでなくても、自らの取り組みの新しさの客観的な証明として「特許出願」は、有効です。「特許取得」がベストですが、「特許出願」でも大きなアドバンテージとなります。

決して意味のない出願を勧めるわけではないのですが、弁理士さんに「特許出願可能」といわれるくらいまで、技術なりアイデアなりノウハウなりを磨くこと、これが新規事業の競争優位性の源泉になります。

この会社は、もともと炭酸水を自社商品として供給していましたから、既存技術を深掘りした新規事業に取り組んだといえます。

既存商品はこれです。

こだわりの炭酸技術が、有名バーテンダーさんにも高い評価を受けたり、大手飲料メーカーさんが仕掛けたハイボールブームが追い風になったりして、この商品も大ヒットしています。

しかし、補助金で応援した商品開発は、この商品ではありません。このお話しはまた明日。

ちいさな企業の補助金活用法(4)

補助金活用で失敗するケース

補助金は精算払いが主ですから、まず支払が先行します。したがって、キャッシュがないと補助金をもらうことができません。 → キャッシュがない場合の失敗

また、せっかく費用を支出しても、そもそも補助金の対象外の費用であれば、補助金がもらえません。 → 補助対象外の費用に注意

3)成功確率は新規性と反比例

今回は、補助金活用という枠からはみ出た話になりますが、「新規事業」を対象とした補助金を狙う場合は、心得ておきましょう。

公募補助金の場合には、公平な選定を行うために、選定基準があらかじめ公表されているのが普通です。おおさか地域創造ファンドの地域支援事業助成金では、公募要領に次のように明示しています(以下は、豊能地域の場合です)。

  1. 新規性
  2. 市場性
  3. 成長性
  4. 革新性
  5. 実現可能性
  6. 地域活性化への波及効果

「あらたな取り組み」を応援する助成金ですから、「新規性」が最初にあげられています。「世界初」や「日本初」とまではいわないまでも、「大阪府初」程度の新規性が求めらます。

次の図をご覧ください。

 

この図は、「新規事業」の類型を、その事業に必要な技術・ノウハウとその事業のターゲット市場とで4つに分類したものです。

補助金に応募いただく事業の多くが、その企業にとって、技術的に新しい取り組みであったり、新たな市場への進出であったり、場合によっては両方であったりします。上図の「△」や「×」の領域です。

新たな技術の開発や新たな市場の開拓こそ、リスクが高く、また成功したときのリターンも大きい。このような事業こそ、補助金で応援するのにふさわしと考えます。もちろん、うまくいくかどうか全く予測不可能な事業は、「実現可能性」というハードルに引っかかりますから、ダメですが、一定の見込があれば、選定されやすいといえます。

しかし、結果としてそのような事業はなかなかうまくいかないのです。

最悪なのが、その企業にとって、技術も新しく、市場も新しいような場合です。一部の例外を除いて、このタイプの事業は、少なくとも数年ではモノにならないことが多いです。

また、「既存市場に新たな技術で新しいビジネスを導入する」場合や「既存技術で新しい市場を開拓する場合」も、なかなか成功事例が生まれていません。

経営資源が非常に限られたちいさな企業における新規事業の取り組みは、やはり既存の技術と既存の市場をメインに考えるべきでしょう。

新たなことに挑戦することは、経営者にとって最も大切なことです。松下幸之助さんも「日々新たに」とおっしゃっています。

しかし、この新しさというのは、全く違う分野に進出したり、違う市場に進出することではなく、今、日常的に取り組んでいる仕事を新たな視点で見直すことの大切さを意味しています。

これこそが、ちいさな企業が飛躍する原動力だと思います。

次回から、自社の既存の技術・市場を大切にして、かつ新たな取り組みにチャレンジして成功した例を、具体的にご紹介していきましょう。

ちいさな企業の補助金活用法(3)

補助金活用で失敗するケース

前回は、キャッシュがない場合を考えました。キャッシュがないとビジネスは厳しいですね。補助金活用を考えるまえに、キャッシュを残す方策を今すぐ検討しましょう。

キャッシュがない

2)補助対象外の費用に注意

これも初歩的な話ですが、社長様と対立が生まれるケースがあります。

補助金によって、どのような費用が補助の対象となるかは異なります。補助の対象となる費用を「補助対象経費」と呼んだりします。つまり補助金制度毎に、補助対象経費が違っているわけです。

補助金に応募しようと考えたら、まずどのような費用に対して補助金が受けられるのか、このチェックは欠かせません。

おおさか地域創造ファンドの場合には、「人件費」は残念ながら助成対象外です。ですから、サービス業など人件費の占める割合が大きいようなビジネスで応募される場合、たとえば、新しいサービスを開発するために、テスト的なサービス提供をすることを考えたとしましょう。

もの作りでいえば「試作」にあたります。もの作りの場合は、試作のためにかかった材料費や、外注加工費などの費用が助成対象となります。もちろんこの場合でも、自社内で試作をつくった場合の社員の人件費は対象とはなりません。

でも、材料費や外注加工費など費用がかさむ場合は、これらの半分でも助成が受けられればメリットは大きいです。

でも、サービスの試作提供の場合には、人件費のウェートが高いですから、これを助成して欲しいという声は大きいです。といって、人件費を助成対象経費として認めることは、おおさか地域創造ファンドでは将来的にもないかな、と思います。

研究・開発を対象とする補助金の場合は、補助事業に従事する研究者の人件費が補助対象になったりしています。しかし、この場合でも、どのような業務に何時間従事したかという「エビデンス」をしっかり残す必要があります。

ちいさな企業では、こうしたエビデンスの整備がなかなかできず、証拠がないばっかりに補助対象経費として認めるわけにいかないケースも多いです。

「人件費は対象となりません」と助成金募集要項に明示していますから、これに関する苦情は少ないのですが、「パンフレット制作費」や「ホームページ制作費」となると、助成対象となるかならないかで意見が対立します。

公的な助成金ですから、助成対象経費は明確に定められています。おおさか地域創造ファンドの場合には、販路開拓費も幅広く対象となりますので、上記のような「パンフレット制作費」や「ホームページ制作費」も対象です。

しかし、です。補助金をもらう側からすれば、たくさん欲しいし、いろいろなものを対象として欲しい。当たり前です。一方、私たち補助金を担当する側からは、補助金の原資が税金等なのですから、厳正な運用が求められています。これも、当然です。

具体的にお話ししましょう。

ある経費が補助対象経費と認められるには、いくつかの要件があります。その一番の要件は、「応募した事業に直接関係する経費であること」です。

その企業そのものを支援する目的の補助金では、これはあまり問題になりませんが、おおさか地域創造ファンドの助成金のように「新たな事業」を対象とする場合は、企業にとってはこれが制約になります。

「会社のホームページの制作費用」は、「新たな事業」のための費用とはいえないので、助成対象経費として認めていません。もちろん「新た事業専用のホームページの制作費」であれば、OKですよ。

このあたりを意識せずに、先に経費を使って、後でそれが助成対象経費とならないとわかって、いろいろ文句を言われる場合があります。

ちいさな企業の社長様は、何から何まで一人でこなさないといけない状況ですから、そんな細かなところまで気配り出来ない。結果として、「使いにくい助成金」「使えない助成金」とおっしゃる方もありますが、助成金の主旨がありますので、柔軟にも対応出来ません。

補助金に応募しようとする場合、どのような経費が補助対象となるのか事前によく調べたり質問したりしましょう。また、幸運にも補助金を受けられる場合は、使った費用がしっかり補助されるように、エビデンスを整備しましょう。

このエビデンスの整備もちいさな企業では負担となることが多いですが、お金をもらうわけですから、義務としてしっかりやる必要があります。