こうして会社は倒産する

売上が落ち、キャッシュが窮屈になってくると、まずはキャッシュアウトを止めようとします。不要不急の出費を押さえ、役員報酬の支払いをストップしたり、減額したり。このあたりは、比較的簡単にできますから、実施されている会社も多いことでしょう。

こうした初期の対策を実施して売上の回復を待つわけですが、日本では人口減少に伴い経済のパイ自体が縮小傾向にあります。多くの市場でマーケットが小さくなっています。ですから、市場が拡大しているような希有な業界に属していない限り、売上を回復させるのは容易ではありません。

これまで経験したことのないような対前年比売上減に直面すると、希望的な気持ちもあって、「これは例外。時間が経てば以前の売上に回復するだろう」と考えがちです。そして決算を迎えます。大きな営業赤字。

売上回復期待から以前の売上ベースの固定費を維持していますから、当然です。ここに至って、固定費の削減に取り組み始めますが、「固定費」というくらいですから、ちょっとやそっとのことではなかなか削減出来ません。

思いつく削減策は、どれも相当の痛みを伴います。なかなか踏ん切りがつきません。

そうこうする間に、何ヶ月かは売上が前年並みに持ち直す時期もあったりして、下がり続けるでもなく、回復するでもない、方向感の定まらない状況です。これが、また思い切った策を実施することをためらわせます。

そして、また決算。抜本的な対策はできていませんが、経費削減には努めましたから赤字幅は縮小。それでも営業赤字。あるいは「二期連続赤字はまずい」ということで、かろうじて黒字決算で終えられたでしょうか。

外部環境の変化とそれへの対応の遅れから、営業ベースでの赤字体質になっていますが、まだそれには気付けないことが多いですね。

営業ベースで赤字であれば、借入金の返済原資はありません。借金は永久に返せない状態です。しかし、商売を続けていれば、それなりにお金は回っていますから、キャッシュは窮屈ですが、まだ危機感はありません。

このような状況で、金融円滑化法を利用して据え置き期間付きのリスケを金融機関が認めてくれると、元金の返済がストップするので、資金繰りが一気に楽になります。

1年くらいの据え置き期間ですと、売上回復期待で漫然と時間を費やし、再度のリスケ依頼に陥りそうです。

それでもこの時点では、「倒産」というような切迫した危機感はないのが普通ですから、痛みを伴う固定費削減に取り組めば良い方で、結局無為に時が流れます。

役員報酬の未払いが膨らみ、役員借入金も限界、リスケしているので金融機関からの資金調達も困難。親しい仕入先には支払を猶予してもらいつつ、何とか資金を回している状態。

ここまで来るとかなり危機的な状態です。

担保を処分して会社をたたむことも考えますが、借金が残るのが普通ですから、それもできません。

整理解雇するまでもなく、社員も一人減り二人減りし、その分の仕事を社長や家族で分担してどうにか仕事を回していますが、そんな無理は長続きしません。過労から、仕事のミスで取引先を怒らせたり、不注意が原因の事故が起こったりしがちな頃です。ご用心ください。

「倒産」や「自己破産」も現実のものとして考え始めますが、取引先に迷惑をかけることが重荷だったり、学校に通う子供がいたりすると、そのことも心を痛めます。

こうして、また時間が流れていきます。

売掛金を回収すると、そのお金が会社に留まることなくすぐ支払に回され、まとまった現金が会社に滞留することがありません。

自己破産するにも、弁護士費用として相応の現金が必要です。最低でも百万円は必要でしょう。かつては何ということもなかった百万円が、ここに至っては、どうにも捻出出来ません。

これが最悪のケースでしょうか。

一体どうすれば良かったのでしょう。

以上は架空のストーリーですが、ベンチャー企業の倒産までの経緯を詳細につづったベストセラーがあります。

実際の倒産は、上記のように単純ではないのですが、しかし、その原因と責任はすべて社長です。このことだけは、会社の規模には関係ありません。