顧客ニーズの頭打ち

いきなりですが、次の問題を考えてみてください。


近年、多くの産業で、技術革新の進展や顧客ニーズの変化のスピードアップにともなって、製品のライフサイクルが短縮化する傾向が見られる。これに対応すべく企業のイノベーション活動は活発化している。そのような戦略対応に関する説明として、最も不適切なものはどれか。

ウ 業界主流の製品を供給している企業は、技術イノベーションに注力しすぎて、当該製品をしばしば消費者の求める製品の性能から乖離した高性能製品にしてしまうことがある。

(中小企業診断士 第一次試験 平成19年度 企業経営理論 第8問より抜粋)


日本の家電メーカーが次世代テレビとして打ち出している「4Kテレビ(4K2K)」について、総務省が2014年のワールドカップに照準を合わせて4K放送をCSで開始するという報じられ、4Kテレビ論争が盛り上がっています。

4Kテレビは、東芝が2011年12月に55インチテレビ「REGZA 55X3」として初めて商品化しています。発売当初の価格は、価格.comで調べると、877,966円となっています。ちなみに、現在の最安値は459,800円とほぼ半額です。

液晶テレビやプラズマテレビでは、価格が急激に下がるコモディティ化が進行しました。その結果、シャープやパナソニックなどの日本の家電メーカーが苦戦しています。

そこで、新しい付加価値を付けるために「3Dテレビ」が発売されました。私自身は、3Dテレビを体験していませんので、良いも悪いも論じる立場にはありませんが、「3D放送」自体にあまりお目にかかる機会もなく、「3D市場」はそれほど普及しているように思えません。

「3」がダメだから「4」というわけでもないのでしょうが、「4Kテレビ」は普及するか。「3Dテレビ」のように終わるのか、それとも日本メーカーの復活の起爆剤になるのか。

「テレビそのものの役割が終わりつつある」「国主導でやっても普及しない」などの4Kテレビ失敗論と、「大型ハイビジョンテレビには4K技術が必要」「画像処理チップの開発競争がポイントであり、テレビは4Kアプリケーションの一つに過ぎない」などの4Kテレビ支持論が熱く戦わされています。

私はというと、「3Dテレビ」の時もそうでしたが今回の「4Kテレビ」の話題に接しても、中小企業診断士講座で講師を務めているためか、上記の診断士試験問題を思い出すのです。

ウの選択肢は、正しい内容です。ちなみに、「不適切なものを選べ」という題意から正解ではない(ややこしいですね)のですが。

「消費者の求める製品の性能から乖離した高性能製品にしてしまう」という「顧客ニーズの頭打ち」を説明するのに、「3Dテレビ」と同様に「4Kテレビ」も良い例かなと思うのです。

日本国内を考えれば、4Kテレビの需要は富裕層にはあると思いますが、中国や東南アジアなど十数億のマーケットにおいて、テレビの更なる高精細化へのニーズは当面は見込めないでしょう。

つまり、4Kテレビは、大多数の消費者の求める製品の性能から乖離した高性能製品なのでは、ということです。

ただし、4Kテレビなら、現状のハイビジョン放送が大画面でより近くから美しく見えるそうですので、フルハイビジョンテレビと同じ価格帯になれば、普及するでしょうね。

また、AppleがRetinaディスプレイという独自の高精細ディスプレイを自社製品に搭載し、新たな感動体験を提供できたように、ニーズは大画面に限らないかも知れません。

しかし、広く普及するためには「低価格化」が不可欠であり、これは、コモディティ化が進行するということなので、長期的に収益が見込める商品となるかはやはり未知数です。